地元のためにできることを・・・〜花火に隠された意外な事実〜花火師インタビュー

もうすぐ安比の年末行事「除夜の花火大会」ですね。     
写真提供:安比高原リゾート

今回はその華やかな世界の影で粋に生きる八幡平市の花火師の柴内宏さんにインタビューして来ました。

地元のために職人になった

現在もガソリンスタンドを経営している柴内さんを中心に当時の若者たちが、旧安代町で地区の祭りを盛り上げようと集まって資格を得たことが始まりだったといいます。

「今から30年程前、最初は夏祭りで夏らしく花火でも打ち上げようと決めたが、業者を頼むほどの規模でもなく、また予算もなかったため、自分たちで打ち上げる資格を取るところから始めました。

消防に入って、消防演習で狼煙を上げる時、当時担当していた人たちが高齢化してしまったこともあり、難儀になって若者たちにやり方を教え始めたことをきっかけに資格を取りました。

昔は町おこしの一環で役場の若い人たちも資格をとって手伝いに来てくれていたんですよ。」

狼煙と花火の違い

狼煙と花火の違いについて聞いてみました。

「狼煙は筒に何個か入れて、導火線の長さをかえたりします。長さは計算するというよりは長年の勘でカットしています。」

作るところはどこでもいいわけではないのだとか。

「ちゃんと県から許可を得た場所でしか作れないのです。

私は秋田県にある許可を得た小屋で作っていました。
今は忙しくて作るところまではできなくなったので、外注したものを使っています。」

火薬の種類や量によって変わる花火

「花火の色は混ぜる金属によって変わります。今はもう調合された火薬を売っているからそれを使う様になりました。」

陸上だけではなく水上であげる花火もあるのだそうです。

「昔は水爆係もやっていました。花火を袋に入れて火をつけて離れると、水面で爆発して扇状に広がる花火です。水の中でも半分は同じように広がっています。

火をつけて離れる時、2、3秒遅かったりすると燃えた火薬が飛んでくることもあり、なかなか危険でした。火の粉がボート内の花火に落ちて爆発すれば怪我だけでは済まないですからね。大事故になってしまいます。」

次第に近隣の市町村からも呼ばれて打ち上げに行くこともあったとか。

「7〜8月の花火の時期になるとあちこちからお呼びがかかって、毎日打ち上げてあるいて。2ヶ月くらい秋田県から帰ってこなかったり。楽しかった思い出です。」

打ち上げは1割にも満たない?!

本業のガソリンスタンドの人手が足りなくなり、今はあちこち行くことは少なくなってしまったものの、今でも打ち上げに行くのだそう。

「昔打ち上げていたのを断れなくなった分だけ現在も打ち上げに行きます。その中でも12月31日の除夜の花火は氷点下15℃の環境で準備するので特に大変です。」

打ち上げ後、火事にならないように様子を見てから帰る様にしているそうです。

「夏場は枯れ草に落ちて火事になったりしては困るので、1時間くらい片付けながら様子を見ます。冬場もやはり何かあってからじゃ遅いので、片付けがてら様子を見てから帰る様にしています。

花火は段取り6割、後片付け3割強、打ち上げは1割にも満たない。

量が多い時はボタン式でやりますが、いろんなやり方があります。
湿気らないように銀紙を用いて蓋をする方法では風で飛んでしまったり、散らかったりしない様に気を使うので、田んぼなどで打ち上げる時は使わない様にしたり、環境によって様々なやり方で打ち上げます。」

天気には敵わない

聞いてるだけでも大変そうですが、もっと大変なことがあるのだとか。

「天気が一番困ります。延期となり予定が変わる時は筒が足りなくなったりするので、夜帰ってきてステン製の筒を洗って、扇風機や除湿機をかけて乾かして朝にまた火薬を詰めてと大忙しです。

黒色火薬を使うと、錆びてしまうので一回打ち上げるごとに洗わないといけない。」

大変なことが多い花火の準備ですが、お客さんからの反応を見るとまた来年も頑張ろうとやる気が出るのだそうです。

せめて子供達に残したい

後継者について聞いたところ、意外な答えが帰ってきました。

「これからは私の様な伝統的な花火のやり方での後継者探しは難しいでしょう。
危険な仕事だし、今はデジタルな方法も登場し、打ち上げの方式や、筒のセッティング等、変わってきています。

打ち上げ用にプログラミングされたパソコンを何台も使って打ち上げるのが主流になってきているから、アナログな方法はきっともう残らないのではないかと思う。

そんなこともあり、うちの雑貨屋ではあえて昔ながらの売り方で玩具花火を販売しています。
空き箱にバラして入れた花火を一本から買える様にしています。」

買い物かごも昔ながらのお菓子の箱や蓋にしているそうで、私も久々に童心にかえって選んでみました。

花火の小売りを通して様々な人模様を見ることができるのもバラ売りの魅力だそうです。

「買い方に性格が出るんですよ。値段を見ないでガサっと買う子もいれば、30円、10円と計算しながらうんと考え込んだり。

今はスーパーなどで袋入りのものを買うことがほとんどになってしまって、子供が自分で選ぶ楽しみがなくなっているように感じています。
だからうちだけは昔ながらのやり方にこだわって残していきたいと思っています。

手間はかかるけど、セットじゃ面白くないからね。それでも今は半分くらいの種類しか取り扱ってないです。昔はもっといろんな種類があったんですよ。

昔は子供たちも多かったけど今はコロナの影響なんかもあって、お盆に里帰りしなくなって本当に子供が減った。」

実はちぎる!花火の先っちょの紙。

手持ち花火の話題になって、また意外なことを教えてもらいました。

「先っちょの紙は湿気防止のためについているので、本当はちぎって火薬をむき出しにして火をつけるのが正解です。

あと、小ネタだけど、ノコギリなんか研いだ後に出る細かい鉄粉を集めて和紙に包んで燃やすと線香花火になるんだよ。」


華やかな表舞台の裏には思いやりの優しさと知識が詰まっていたんですね。

年末には安比高原で除夜の花火大会があります。
是非、柴内さんのことを思い浮かべながら楽しんでみてください。



スキー場駐車場から打ち上げ
12月31日 23:50 〜

澄み切った冬の夜空に光り輝く花火が新年を鮮やかに彩ります。
※悪天候の場合は延期または中止となる場合がございます。